
カメラの初心者から中級者の方まで、「ナナニッパ」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。プロカメラマンの機材紹介で登場したり、写真愛好家の間で「憧れのレンズ」として語られたりすることも多いレンズです。この記事では、そんな「ナナニッパ」の正体から、その特徴、そしてどのような場面で活躍するのかまで、詳しく解説します。レンズ選びに迷っている方や、カメラ機材に関する知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
ナナニッパとは
「ナナニッパ」とは、主に焦点距離70-200mm、開放F値2.8の望遠ズームレンズを指す愛称です。焦点距離の「70(ななじゅう)-200(にひゃく)」とF値の「2.8(にっぱ)」を組み合わせて、このように呼ばれています。正式な製品名はメーカーによって異なり、例えばキヤノンなら「EF70-200mm F2.8L IS USM」や「RF70-200mm F2.8 L IS USM」のような名称で販売されています。プロカメラマンからアマチュアの写真愛好家まで幅広い層に愛用されており、その汎用性の高さから「まず一本持っておけば間違いない」と評価されることも多い、定番レンズの一つです。
ナナニッパのスペックと特徴
焦点距離70-200mmの魅力
70-200mmという焦点距離は、ポートレート撮影に適した中望遠域(70mm付近)から、スポーツや野生動物、風景の一部を切り取る撮影に向いた望遠域(200mm付近)までを1本でカバーできる、非常に使い勝手の良い画角です。この焦点距離域は、被写体と適度な距離感を保ちつつ、背景を大きくぼかして被写体を際立たせるような印象的な写真を撮影しやすいため、多くのプロカメラマンに重宝されています。
F2.8通しのメリットとは?
F2.8「通し」とは、ズームリングを回して焦点距離を変えても(70mmから200mmまでズームしても)、開放F値が常にF2.8のまま変わらないことを意味します。この「F2.8」という明るさによって、以下のようなメリットがあります。
- 暗い場所での撮影に強い: より多くの光を取り込めるため、室内や夕暮れ時、曇りの日など光量が少ない状況でも、シャッタースピードを速く設定でき、手ブレを抑えやすくなります。
- 美しいボケ味: 開放F値が小さい(明るい)ほど、背景を大きくぼかすことができます。F2.8の明るさは、被写体をくっきりと浮かび上がらせ、背景を美しく整理した表現を可能にします。
- AF性能の向上: 明るいレンズはオートフォーカス(AF)センサーにより多くの光を届けられるため、AFの速度や精度が向上しやすく、特に動きの速い被写体を捉える際に有利になります。
どんな撮影シーンで活躍するのか
ナナニッパは、その汎用性の高さから非常に多くの撮影シーンで活躍します。代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- ポートレート: 背景を美しくぼかし、人物を際立たせることができます。特に屋外での撮影で自然な表情を捉えるのに適しています。
- スポーツ: 望遠域と明るいF値、高速AFにより、遠くの選手の動きをシャープに捉えます。
- イベント・報道: 結婚式や発表会など、被写体との距離があり、かつ場の雰囲気を壊さずに撮影したい場面で重宝されます。
- 動物・乗り物: 野生動物や飛行機、鉄道など、近づけない被写体を大きく写したり、動きのある被写体を捉えたりするのに適しています。
- 風景: 遠くの景色の一部を切り取ったり、圧縮効果(遠近感を弱める効果)を活かした表現をしたりするのに使えます。
このように、被写体との距離を取りたい場面や、背景をぼかして被写体を強調したい場合に、特にその性能を発揮します。プロの現場では、様々な状況に対応できる定番レンズとして広く使われています。
なぜナナニッパは「大三元レンズ」と呼ばれるのか
「大三元」とは?他の仲間レンズも紹介
「大三元(だいさんげん)」とは、カメラメーカー各社がラインナップするレンズの中でも、特に最高峰とされるF2.8通しのズームレンズ3本を指す総称です。麻雀の役「大三元」になぞらえて、このように呼ばれています。具体的には、一般的に以下の3本のレンズを指します。
- 広角ズーム: 16-35mm F2.8 や 14-24mm F2.8 など(メーカーにより焦点距離は異なる)
- 標準ズーム: 24-70mm F2.8
- 望遠ズーム: 70-200mm F2.8 (=ナナニッパ)
これら「大三元レンズ」は、いずれもズーム全域でF2.8の明るさを保ち、高い光学性能を持つプロ仕様のレンズです。この3本があれば、広角から望遠までの主要な画角を、妥協のない高画質でカバーできると言われています。
初心者でも「大三元」を揃えるべき?
初心者の方にとって、大三元レンズは非常に高価な投資になります。写真への情熱が高く、長く使える高性能な機材を最初から揃えたいという考えであれば、検討する価値はあるでしょう。しかし、必ずしも最初から全てを揃える必要はありません。
まずは、ご自身のよく撮る被写体や好みの画角に合わせて、3本の中から最も必要性の高い1本を選んでみるのが賢明です。特にナナニッパ(70-200mm F2.8)は、その汎用性の高さから、大三元レンズの中でも最初に手に入れるレンズとして選ばれるケースが多いようです。
主要メーカーのナナニッパ比較
キヤノン・ニコン・ソニーの違い
主要なカメラメーカーであるキヤノン、ニコン、ソニーは、それぞれ独自のナナニッパレンズを開発・販売しています。各社のレンズには、設計思想や描写の傾向に特徴が見られます。
- キヤノン: 伝統的に豊かな色再現性や、滑らかなボケ味に定評があると言われます。プロの現場での信頼性も高いです。
- ニコン: 堅牢な作りとシャープな描写、過酷な環境下での信頼性を重視する傾向があると言われます。
- ソニー: ミラーレスカメラに最適化された設計で、比較的小型軽量なモデルが多いのが特徴です。最新技術の導入にも積極的です。
ただし、近年は各社とも技術開発が進み、手ブレ補正機能や防塵防滴性能なども向上しているため、基本的な性能差は小さくなってきています。最終的には、ご自身の使用しているカメラボディとの相性や、好みの描写、操作感などで選ぶのが良いでしょう。
サードパーティ製(シグマ・タムロン)もアリ?
シグマやタムロンといったレンズメーカー(サードパーティ)からも、高性能なナナニッパレンズが発売されています。これらのレンズの最大の魅力は、コストパフォーマンスの高さです。純正レンズと比較して、数万円から十数万円程度安価な場合が多く、予算を抑えたい方にとっては有力な選択肢となります。
近年では、光学性能も純正レンズに迫る、あるいは独自の魅力を持つ製品も増えています。ただし、純正レンズと比較すると、オートフォーカスの速度や精度、手ブレ補正の効き、あるいは描写の「味」といった点で違いが見られる場合もあります。購入を検討する際は、レビューを参考にしたり、実際に試用したりして比較検討することをおすすめします。
ナナニッパを使うメリットと注意点
初心者にも扱いやすい?
ナナニッパはプロ向けの高性能レンズですが、初心者の方にとってもメリットがあります。ある程度の重量はありますが、多くのモデルには強力な手ブレ補正機能が搭載されており、望遠撮影でも比較的安定した撮影がしやすいでしょう。また、70mmから200mmまでの画角をレンズ交換なしでカバーできるため、様々な被写体に素早く対応でき、撮影チャンスを逃しにくくなります。
持ち運びの負担や価格の現実
多くのメリットがある一方で、ナナニッパには注意すべき点もあります。
- 重量とサイズ: 一般的に重量は1.5kg前後あり、サイズも大きいため、持ち運びにはそれなりの覚悟が必要です。長時間の撮影では、一脚や三脚を使用したり、適切なカメラバッグを選んだりするなどの工夫が有効です。
- 価格: 高性能なレンズであるため、価格も高価です。純正品の最新モデルであれば数十万円、サードパーティ製や中古品でも十数万円程度はすることが一般的です。
購入を検討する際には、これらの点を考慮する必要があります。可能であれば、購入前にカメラ店で実際にカメラに装着して重さやバランスを確認したり、レンタルサービスを利用して実際の使用感を試してみたりすることをおすすめします。
ナナニッパはどんな人におすすめ?
では、具体的にどのような人にナナニッパはおすすめなのでしょうか?
ポートレート撮影が多い人
ポートレート撮影では、一般的に85mmから135mm程度の中望遠域が、被写体との自然な距離感を保ちつつ、背景を整理しやすい画角として好まれます。ナナニッパはこの使いやすい焦点距離を完全にカバーしており、さらにF2.8の明るさを活かして背景を美しくぼかすことで、被写体である人物を印象的に浮かび上がらせることができます。特に屋外でのポートレート撮影をよく行う方には、非常に魅力的なレンズです。
スポーツ・動物・イベントなど動体撮影に強い
動きの速い被写体を捉えるスポーツ撮影や、近づくことが難しい野生動物の撮影、あるいは遠くのステージを撮影するイベントなどでは、望遠性能と高速なオートフォーカスが重要になります。ナナニッパは200mmまでの望遠域を持ち、F2.8の明るさがオートフォーカス性能の向上にも貢献するため、これらの動体撮影において優れた性能を発揮します。決定的な瞬間を捉えたいフォトグラファーにとって、頼りになる一本となるでしょう。
ステップアップしたい中級者以上の方へ
カメラに付属していたキットレンズなどから、より本格的な写真表現を目指したいと考えている中級者以上の方にも、ナナニッパはおすすめです。キットレンズでは得られなかったシャープな描写、美しいボケ味、暗い場所での撮影能力などを実感することで、写真のクオリティが一段と向上するでしょう。画質や操作性の向上は、新たな創作意欲を刺激してくれるはずです。高価ではありますが、長く愛用できるレンズであり、写真技術の向上とともにその真価をさらに発揮してくれることでしょう。
まとめ
ナナニッパ(70-200mm F2.8)は、その卓越した性能と汎用性の高さから「大三元レンズ」の一角を担う、名高い望遠ズームレンズの一つです。ポートレートからスポーツ、イベント、風景まで、非常に幅広いジャンルで活躍し、多くの写真愛好家やプロカメラマンに長年愛用されています。確かに、その重量や価格は決して軽視できませんが、得られる画質や表現の幅、撮影体験を考えれば、長期的に見て価格に見合う、あるいはそれ以上の価値があると言えるでしょう。
ご自身の撮影スタイルや使用しているカメラ、そして予算に合わせて、キヤノン、ニコン、ソニーといった主要メーカーの純正レンズや、シグマ、タムロンなどのサードパーティ製レンズを比較検討してみてはいかがでしょうか。最初は高価な投資に感じるかもしれませんが、写真表現の可能性を大きく広げてくれるナナニッパは、きっとあなたのカメラライフをより豊かにしてくれるはずです。

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